紅芳記


大殿が伏見城に行ってしまわれた事で、屋敷は静けさを取り戻しました。

まるで、嵐が過ぎ去ったかのように。

「…殿。」

「ああ、小松か。」

「何事だったのでございます?」

「…太閤殿下は、恐らく、秀次公の縁者や息のかかった者を、徹底的に粛正する気じゃ。
現に、聚楽第にいた奥方様、若様姫様方は、捕われたそうじゃ。」

「なんと…」

「兄上。」

源次郎殿が殿に話し掛けます。

「源次郎、清姫を此処に置くには、それだけの覚悟がいる。」

「はい。
しかし、たった十二の娘を、むざむざと差し出す訳には参りません。」

その言葉に、利世殿も頷かれます。

「私も、源次郎様と同じにございます。」

「…そうじゃな。
父上を、信じよう。」

殿のお言葉に、皆が頷きました。