紅芳記


利世殿に連れられ、部屋に入るやいなや、利世殿は崩れるかのように座り込みました。

利世殿の肩は、わずかに震えております。

私も座り、利世殿と目線を同じく致しました。

「利世殿…」

「あ、義姉上…」

「よく、頑張りました。」

「義姉上…!」

利世殿のお気持ちは、よく分かるのでございます。

殿に側室など、辛うて辛うて仕方ありません。

殿は、私よりあちらを好いていらっしゃるのだと、どんどん後ろ向きな考えが沸いて来てしまうのです。

利世殿は、もういくつもの涙を流しています。

なんだか、私まで辛うなって参りました。

「義姉上…!
私は…、私は、側室を認めてしまいました…。
あれ程、嫌にございましたのに。
私の本心ではござりませぬのに…!」

利世殿はそう仰せられて、また涙を流されました。

「利世殿、貴女はお強うございます。
清姫は、行く宛ものう、不安にございましょう。
父上の事で、さぞ悲しんでおいででしょう。
貴女も、それをわかっていらっしゃいます故、ああ申された。
利世殿、きっと、源次郎殿もそれをわかっていらっしゃいますよ。」

「義姉上…!」

利世殿は、しばらく泣きつづけました。