紅芳記


清姫の部屋に近づくにつれ、啜り泣くような声が聞こえて参りました。

それも、何人もの。

同じ屋敷内で、ここだけ別世界のようでございます。

私は利世殿と、顔を見合わせました。

とりあえず、私たちは清姫の侍女と思われる者に、取り次ぎを頼みました。

すると、すぐに通され、私はこの時はじめて清姫と会うこととなりました。

「と、殿…。」

「利世!?
いや、これは、その…」

なんと、清姫の隣には源次郎殿がいらっしゃいます。

しかも、啜り泣く清姫にお胸を貸されております。

源次郎殿は、しまったと言いたげに頭を掻かれ、清姫は利世殿をじっと見ています。

「利世、ちがうのじゃ。
これは、その…」

「清姫殿。」

「…え?
…は、はい。」

利世殿は源次郎殿を無視し、清姫の手を取りました。

「お父上様のこと、さぞ辛うございましょう。
どうぞ、これからもこちらにてお過ごしください。
私は、貴女の味方にございます。」

「り、利世…?」

「殿、清姫殿をご側室にして差し上げてください。
お父上という後ろ盾が無くなり、さぞ不安にございましょうぞ。」

「良いのか…?」

「…本当は、嫌にございますが、仕方ないでしょう。」

「利世…」

「では、私はこれにて。
義姉上、参りましょう。」

「はい…」

利世殿は部屋を出ようとなさいましたが、なんと清姫に引き止められました。

「お、御方様…。
ありがとう、存じます…!」

「清姫殿、これからは皆で真田家をもり立てて行きましょう。」

「はい…!」

そして利世殿と私は、清姫の部屋を出て、私の部屋に戻りました。