紅芳記


私があれこれと思案いたしておりますと、利世殿が訪ねていらっしゃいました。

そのお顔は、心底困っているといったご様子にございます。

「義姉上様っ…」

利世殿は、崩れるようにその場に座られました。

私は急いで駆け寄ります。

「利世殿!?
如何致しました?」

「私、もうどうして良いやら…」

「一体、何が…?」

「清姫が…」

「清姫殿が、何か?」

「お父上の身を案じ、毎日泣き伏していて…。
私は正室でありながら、何もしてやれず…。
殿は毎日、清姫のところに行ってしまわれて。
いえ、殿の事はこの際良いのです。
私は、何も出来ぬのが悔しゅうて、悔しゅうて……」

「利世殿…」

「義姉上、私は、どうしたら…?」

「利世殿、参りましょう。」

「え?」

「参りましょう、清姫殿の所へ。」

「し、しかし義姉上様…っ」

私は、利世殿を半ば無理矢理、清姫殿の所まで連れて行きました。