紅芳記


「君子、危うきに近づく可からず…、か。」

世都の去った部屋の中で私は一人、呟きました。

わかっている。

豊臣家の内情に関わる事が、どれ程危険か、私とて、重々承知している。

それなのに、止められなかった。

己の、知の欲に、私は。

真田の将来や、清姫の為という建前のもとで、私は…。

私は深く、深く息を吸って吐き、いつもより強い鼓動を打つ心の臓を落ち着かせようといたしました。