紅芳記


部屋の人払いを済ませ、何人も近寄れないようにしてから世都を呼びました。

こういう時、本当に世都の存在のありがたさを感じます。

私は早速、世都に話しを切り出しました。

「世都。
そなたを呼んだは他でもない。
今度の事、詳しく知りたいのじゃ。」

世都は暫く何も言いませんでした。

私も、己の言っている事の恐ろしさ、危うさを知らぬ訳ではありません。

ただ、世都の言葉を待ちます。

「奥方様。
ご存知とは思いまするが、それは、世の習いに背くばかりでなく、豊臣家の内情に関わる事にございます。
事によっては、私や奥方様のみならず、真田家、もしかしたら実の父上様や徳川様をも危険に晒す事になりまする。
……それでも、よろしゅいござりまするか?」