夢の御方様の御子は、男子にございましたか…。

目を閉じ、一度深呼吸をし、殿の方に体を向けました。

そして、頭を下げ、

「殿、お世継ぎ誕生、まことにおめでとうござりまする。」

と言いました。

私は、その体制から、なかなか動けません。

動いたら、今の私の醜い顔を殿に見られてしまいます。

世継ぎ誕生という、めでたいことなのに。

…泣いてはならないのに。

「小松、顔を、上げよ。」

そんな殿のお言葉に、今の私は従うことができません。

首を横に振り、

「今の私は、きっと醜い顔をしておりましょう。
そのような姿、私は殿に見せられませぬ。」

そう言いきったあと、ため息が聞こえました。

ああ、呆れられてしまいましたか…。

それも、道理にございますわね…。

「小松は馬鹿じゃ。」


殿はそう申され、無理矢理私を起こして抱きしめられました。

「小松は大馬鹿じゃ。
わしは、まだ夢の子を世継ぎにすると言うたわけではない。
次にそなたが男を産めば、わしは間違いのう、その子を世継ぎとする。
良いな。」

殿…。

「…はい。
次こそは、私が男子を。」

私は消え入りそうな声で申し上げました。

すると殿の腕の力が、幾分強くなったように感じられました。