紅芳記


生まれたという報告のために、夢の御方様の乳母局が参上しました。

乳母局は面を上げて、一呼吸おきます。

「只今、お子が御生まれになりました。
お子は、男子(オノコ)にございます。」

男子…。

「真田家の、お世継ぎにございます!」

乳母局は、もう一度強く言いました。

「そうか、大儀であった。
下がれ。」

殿は、乳母局の言葉に眉一つ動かさず、淡々と告げました。

乳母局は、そんな殿のご様子に不満気な顔をして退出していきました。