三刻ほどして、姫が乳母に抱かれてやって来ました。
この乳母は家臣の妻のひとりで、一年ほど前に女子を産んでおりました。
名を、ユキと申します。
「姫君様でございます。」
ユキは抱いていた姫を、私に差し出し、私は姫をしっかりと抱き上げるました。
「まあ、重たいこと。」
赤子とは、思った以上に重たいのですね。
これも、命の重み、でしょうか。
「ユキ、そなたの娘は如何しておる。」
「家で母に預けております。
娘も二つになりましたし、乳はもう必要ごさいませぬゆえ。」
「それは、ならぬ。
娘とて母が恋しかろうて。
城に連れて参るが良い。
殿や侍女たちには私から言うておくでな、我が子の世話ばかりでのう、娘にもかまってやっておくれ。
なに、そなたばかりでは大変であろうからふじや奈多にも手伝わせよう。
姫に遊び相手が出来てくれれば、私も嬉しい。」
私はかねてからの考えを一気に話しました。
ユキは驚きはしましたものの、すぐに頭を下げて
「お心遣い、まことにかたじけのうございます。」
と返事をしました。


