紅芳記


この日は、安産祈願のために僧を城に呼んでおりました。

経を読んでもらい、産小屋の中を清めます。

私は少し前から産小屋の中で生活しておりました。

穢れをはらい清め、物の気や鬼を寄せつけないためです。

昔よりはいくらかましになったものの、出産で命を落とす女子たちは少なくありません。

また、家の者にも穢れが移らぬようにという理由もあります。

真っ白な部屋で大きなお腹を撫でていると、少なからず不安というものも募ってきてしまいます。

それに、子を産むまでは殿にお会い出来ない…。

今の私にはそれが何より辛いのです。

本当は、傍で見守っていて欲しい、勇気付けて欲しい。

けれど、殿に穢れを移すわけには、いかない。

それだけが辛うございます。