紅芳記


侍女達がどんどんざわついていきます。

「静まれ。」

私は短く諌めました。

侍女達は慌てて口をつぐみますが、不安は隠せぬようです。

懐妊したのは私が先。

私のほうが男御子ならば、身分としても長幼の序からしても、後継ぎを決めるには問題ないでしょう。

しかし、もし私が女御子を産み、あちらが男御子であったなら──。

そんな不安が、渦巻いております。

されど、ご懐妊というはめでたきこと。

このまま不安げにしていれば、このご懐妊が気に入らぬなどと不穏なる噂が立ちかねません。

「何か、祝いの品を差し上げようぞ。」

「しかし、奥方様っ。」

「ここは変に騒ぎ立ててはならぬ。
むしろ、友好的にしたほうがよかろうて。」

「はい…」

「皆も良いな、夢殿といがみ合うようなことがあってはならぬ。
そのこと、肝に命じよ。」

私の言葉により、侍女達は頭を下げ了解いたしました。