紅芳記


夏に差し掛かり、蒸し暑い空気のせいか、今日は体が怠く感じます。

夏の衣服の腰巻姿で脇息にもたれていると、慌てた様子のふじが部屋に入って来ました。

額に滲んだ汗はこの暑さのためではないでしょう。

「ふじ、如何いたしたか。」

「は、はい…」

勢いよく入って来たわりに、歯切れの悪い返事をします。

「言うてみなければわからぬぞ。」

「それが……」

ふじはゆっくりと口を開きます。

私はふじの言葉を、すぐには理解出来ませんでした。

周りにいた侍女達も複雑そうな顔をしています。

ふじから聞いたそれは、私にとって驚き以外の何物でもありませんでした。