紅芳記


夜、殿は寝屋に私を呼ばず、わざわざ部屋まで来て下さいました。

「そうか、家臣達が。
皆が懐妊を知るや慌てて退出したのはそれゆえだったか。」

「ええ。
これも、貴方様のお力ゆえと存じます。」

「わしの?」

「皆、貴方様のお子を心待ちにしていらしたのでございましょう。」

「…左様か?」

「はい。」

私は殿に微笑みました。

殿はゆっくりと顔を近付け、そのまま唇を重ね合いました。

そのまま抱きしめられましたが、突然、体を離されました。

「…殿?」

「いや、すまぬ。
じゃが…」

「…何です?」

「……これ以上は、己が、抑えられぬ…」

「まあ」

殿は背を向けて掛け物を頭まで被せてしまわれました。

…可愛い。

私は考えるより先にぎゅっと殿に抱き着いてしまいました。

「…そなた、わしに喧嘩を売っておるのか?」

「いえ、そのような…」

「…はあ。」

殿はぐるっとこちらを向いて、私は殿に組み敷かれられてしまいました。

何度も唇を重ねた後、再び殿に抱きしめられ

「今宵は、これで勘弁してくれよう。」

と、そのままの体勢で眠りにつきました。