紅芳記


半時ほどして、私の部屋の周りにぞろぞろと人が集まりました。

何かあったのかしら?

「ふじ、外を見てきて。」

私はふじを廊下に行かせようとしましたが、その前に襖が開きました。

「何事ですか。」

ふじは驚き混じりに尋ねます。

「は。
殿より奥方様がご懐妊とお聞きいたしました故、皆で御祝いを申し上げに参った次第にござりまする。」

「そうですか。
どうぞ。」

ふじは皆を中に通し、一人一人腰を下ろして、深く礼をしましたので私は、

「面をあげられよ。」

と言いました。

部屋を見ると、矢沢殿に鈴木殿を始めとする重臣、外には足軽などの家臣の末々にいたるまで、本当にたくさんの人でした。

「奥方様、ご懐妊、おめでとうござりまする。」

矢沢殿が口上を言い、皆も続けて

「おめでとうござりまする!」

と声をあわせました。

「何と…。
皆、忝ないの。
必ず健やかなるお子をお生みすると約束致します。」

懐妊がわかったというだけでこうなのだと、産まれた時にはどうなるやら…。

私は期待半分、呆れ半分にそう感じました。