紅芳記


「源次郎殿、利世殿とは何をお話されたのですか?」

利世殿がお帰りになった後、ちょうど源次郎殿を見かけ、好奇心混じりに聞いてみました。

「何を、とは?」

「はぐらかしてはなりませぬぞ。
利世殿に嫁がれるように口説いてしまわれたのではないのですか?」

私は冗談っぽく聞いたのですが、源次郎殿のお顔がみるみる赤くなっていかれます。

「なっ…!
そ、そのようなこと、ございません!!」

随分と焦ってしまわれて。

「まさか、図星なのですか?」

「断じて違います!
!!」

私は可笑しくてついついからかってしまいたくなり、

「お顔が真っ赤にございますよ。」

と追い撃ちをかけました。

「…っ!
義姉上も人が悪い。」

「まあ酷い。」

私がケラケラと笑うと、源次郎殿もつられたのか薄く笑いました。

「兄上には内緒ですよ?」

「ええ、勿論。」

源次郎殿は小さな声で教えてくれました。

きっとこのように言って頂けた利世殿はきっとお幸せになりますでしょう。

利世殿がうらやましいような気もしなくはない…。

今宵、殿にお願いしてみようかしら。

でも、恐らく照れてしまわれて駄目ですわね。

───新たな幸せの予感に、私まで幸せを感じておりました。