紅芳記


廊下を歩いていると、反対側から殿がいらっしゃいました。

「殿、聚楽第にいらっしゃったのでは?」

「雨が降ってくる前に帰ってきたのじゃ。
そういえば、小松、源次郎を見なんだか?」

「源次郎殿は客間にいらっしゃいますよ。
…利世殿と。」

「利世殿と?」

「はい。
雨が強うなって参りました故、雨宿りをお受け入れしたのですが、その方が利世殿で、今は源次郎殿とお二人でお話合いされているはずにございます。」

「そうか。」

「殿はどちらに?」

「いや、客間に行こうかと思うたが…今行くのは無粋じゃな。
小松、茶でも飲んでおらぬか?」

「はい、喜んで。
ふじ、茶の用意を。」

私は後ろにいるふじに命じました。

「かしこまりました。」