紅芳記


「…貴女が、刑部殿の姫ですか。」

「……はい。
利世でございます。」

やはり、源次郎殿はご存知だったようです。

「源次郎様、申し訳ございませんがこの度の縁談はお断りしとうございます。」

利世殿は源次郎殿にはっきりと申されました。

しかし、源次郎殿は涼しい顔をしています。

「某は、利世殿に嫁いで頂きたい。」

そして源次郎殿は真剣な顔で利世殿に仰せられました。

「されど、源次郎様…!」

利世殿は不安げに瞳を揺らしていらっしゃいます。

私は席を立ちました。

ここは、お二人で話された方が良い。

「私はしばらく席を外します。
お二人でお話なさいませ。」

「義姉上、有り難うございます。」

私は客間を出て、屋敷の奥に向かいました。