紅芳記


そして今日は、淀の御方様に呼ばれて聚楽第に来ています。

「突然呼び立ててすまぬの。」

「いえ。」

「いつでも顔を見せに参れというに、そなたは沼田に帰ってしまいおって。
それでの、今日はそちに見せたいものがあるのじゃ。」

「それは申し訳ございません。
見せたいものとは?」

…何でしょう。

「大蔵。
あれを。」

御方様は侍女に何かをもって来させました。

「どうじゃ。」

「これは…。」

それは、幾つもの南蛮からの舶来物や朝鮮の物でした。

「すごい…。」

「であろう。
太閤様がお土産にくだされたのじゃが、多過ぎて納戸に収まりきらぬ。
いくつかもらってたもれ。」

「え!?
もったいのうございまする!
せっかくの貴重な品々でございますのに…」

「よい。
頼む。」

「しかし…」

「では、これとこれだけでも。」

御方様は見るからに高価な品を指差されました。

「そんな…。」

「そちにしか頼めぬ。
どうかもらってたもれ。」

御方様のせっかくのご好意をこれ以上断るのもどうかと思い、私は有り難く頂くことにしました。

「で、では、ご好意に甘えて有り難く頂戴致しまする。」

私がそういうと、御方様はにっこりと微笑まれました。