紅芳記


聚楽第から帰り、三人で源次郎殿の縁談について話し合っております。

「太閤殿下がのう…。」

「あなた、如何なさいます。」

「有り難く受ける他あるまい。
大谷殿もこのことには賛成しておるそうじゃ。」

「ならば、このまま進めていけば良うございましょう。」

「しかしなぁ。
利世殿が拒んでおるというではないか。」

「義父上様、何故でございますか?」

「大谷殿は業病を患っておられる。」

「業病?」

「肌が膿み、顔の形が変わってしまう病のことじゃ。」

「それで利世殿は…」

「うむ。
己もいつ病となるかわからぬ身ゆえ、断りたいとのことじゃ。」

「…そうですか。」

三人で黙ってしまいました。

ちょうどその時襖が開き、殿がいらっしゃいました。

「父上。」

「源三郎、何用じゃ。」

「太閤殿下からの文を預かって参りました。」

「うむ。」

大殿は文を読むや

「ほんに太閤はぬかりないのう…」

と呟かれました。

「源三郎、源次郎を呼べ。」

「は。」

殿は源次郎を呼びに行かれました。