紅芳記


───翌日。

「北政所様、小松にござりまする。
お久しゅうござります。」

「小松殿、無理を言ってすまなんだな。」

「いえ。
そのようなことはございませぬ。」

「そうか。」

私が北政所様にご挨拶し、大殿が

「して、政所様。
我等もお呼びとは、ただならぬことでござりますかな?」

と冗談半分にお聞きになりました。

「いや。
そこまで急を要することではあらぬがの、安房守殿のご次男…源次郎殿と申されたかのう。」

「源次郎が、何か?」

「太閤殿下が嫁を取らせるとお決めになったそうじゃ。」

「源次郎に嫁を?
太閤殿下が…」

「左様。
縁談ならばまずはそなた達に話さねばならぬと思うての。」

「某に異存はございませぬ。」

「そうか。
その相手じゃが、大谷刑部殿の姫の利世殿をとのことじゃ。」

大谷刑部様の姫君?

「は。
太閤殿下のお取りなしとあらば、有り難くお受け致しまする。」

大殿が頭を下げられましたので、私と京の御前様もそれに従いました。