紅芳記


「はて…。
なんのことにございましょうや。」

どうやら白を切るつもりのようです。

知らぬ存ぜぬでかわされるわけにはいかない。

「ならば、右京殿や矢沢殿が嘘をついていると申すか。」

「ええ。
私には全く身に覚えのないことにございまする。」

「ほう。
では何故そなたは上座についておる。
以前会った時は随分下座に座っておったがのう。」

「ここは、私に当てられた部屋にございます。
私はこの部屋の主も同然。」

「殿がお渡りのおりもそちは下座につかぬと申すか。」

さすがに殿の名を出したら、口をつぐみました。