紅芳記


翌日の昼下がり、夢の御方様の許へ伺いました。

「奥方様…っ!」

香登は押し殺した声で言いました。

香登がこのように驚くのも無理はありません。

以前お会いしたときとは全く違う席に、夢の御方様が座っていらしたのです。

その席とは、私用と思われる上座のすぐ隣。

同じ身分と暗に言っているようなものでした。

側室とは、殿の御寵愛を得てはいても身分は明らかに正室の下、同じ上座座ることなどまずありません。

「香登、ちと落ち着け。
怒りを表にしてはならぬ。」

私は侍女達を注意し、設えられた上座の席につきました。