紅芳記


まさか、夢の御方様がそのようなことをなさるのでしょうか。

しかし、右京殿が嘘をついているとも思えません。

「それは本当なのですか。」

「はい。
本当のことにございます。
お夢の方様は奥方様のお部屋を勝手に使おうとなさいましたり、御家来衆の政に口を出そうとなさいましたりと…。
私や御城代の矢沢様が御諌め致しましても、なんの悪びれもなさらず、困り果てておりました。
奥方様がお戻りと伺い、奥方様におすがりする他ないと考え、このことをご報告したのでございます。」

どうやら、本当のことのようです。

「わかりました。
夢の御方様のことは私がなんとかいたしましょう。」

「申し訳ございません。
奥方様にこのような…」

「良いのです。」

「はぁ…」

「言いにくいことをお伝え下さり、ありがとうございます。」

「いえ…!
私のほうこそ、ありがとうございます。」