紅芳記


「奥方様、お久しゅうございまする。」

「本当に、久しぶりですね。」

久しぶりにお会いする右京殿は私の記憶よりもお美しくなっていらっしゃいました。

「それで、如何なさいましたでしょうか?」

私がそう言うと右京殿は少し躊躇いましたが、

「…それが、お夢の方様のことでございまして。」

「夢の御方様の?」

「はい…。」

右京殿は困ったような表情で言いました。

「夢の御方様が、どうしたのです?」

右京殿はまた少し躊躇い、

「お夢の方様は、殿と奥方がご留守なのを良いことに、いろいろと御自らが殿の御正室であるように振る舞われ、御家来衆も私達も困っておりました次第にございまして。」

と仰せられました。