紅芳記


右京殿の侍女と会うのは右京殿が側室となられて以来のことでした。

「奥方様、お帰りなさいませ。」

そう言い、頭を下げました。

「大儀である。
面を上げよ。」

侍女が面を上げたので、

「如何致した。
私が留守の間に、何かあったのか。」

と問いました。

「…はい。
それゆえ、お方様が奥方様にお会いしたいと。
私はそのお許しをもらいに罷り越しました。」

右京殿が?

本当に何があったのかしら。

「わかりました。
いつでも構いませぬと、右京殿に伝えよ。」

「かたじけのうございます。
では、すぐにでもよろしゅうございましょうか。」

「構わぬ。」

侍女は頭を下げ、部屋を出て右京殿を呼びに行きました。