紅芳記


私も沼田へ帰らなくては。

ふじと仲橋に支度はさせてあります。

袴を着け、京な留まる家臣に馬を用意させました。

「奥方様、何も御自ら馬乗られなくても…。
駕籠でよろしいではございませぬか。」

ふじは心配そうに言いました。

「駕籠では時間が掛かる。
早う沼田へと、殿のご命令じゃ。」

私は負けじと言い返します。

「世都が一緒であるし、武術に長けた家臣を何人も殿が付けて下された。
心配することはない。」

「お殿様は奥方様の駕籠の護衛としてお付け下されたのでしょうに。」

「私は気が短いのよ。」

「短すぎまする。」

「それはふじ、そちが1番存じておろう。」

「左様にございますが、しかし…」

「そなた達は後からゆっくり参るがよい。」

「はぁ…」

なんとかふじを言い負かし、馬に乗りました。