紅芳記


「稲姫さまじゃと?」

奥からおなみの父上と思われる方がやって来ました。

「と…、ととさま!」

おなみは必死になって私を隠そうとします。

「稲姫さまがいらしたのか!?
何故隠す?」

おなみの父上は厳しそうな方です。

私のせいでおなみが叱られてしまうかも知れません。

「お初にお目にかかります。
お稲にございます。」

私はおなみの父上にできる限り丁寧に挨拶いたしました。