紅芳記


夜、いつものように殿の閨に呼ばれました。

「小松。
明後日、肥前に向かう。」

「はい。
お気をつけて、行ってらっしゃいませ。」

「うむ。」

殿に抱きしめられました。

「…そなたは、わしが肥前に発ったら沼田に戻れ。」

「…はい?」

「言うたはずじゃ。
数日して人質扱いされる前に、沼田に戻れと。」

私はなにも答えませんでした。