紅芳記


「そなた、昨日はねね様を訪ねておったのう。」

初様はまだ納得出来ていないご様子です。

「よく、ご存知で。」

「保険か?」

「保険、とは?」

「ねね様に気に入られ、姉様にも気に入られれば、真田は安泰ぞ。
そのための保険であろう。」

「違います。」

「どこがじゃ。」

「…北政所様とお話するうち、子のない者同士いろいろ思うところもございました。
御側室が産むことをどう思うかも語り合いました。
そして、お話したくなったのです。
お世継ぎを産まれた御側室様に。
私に他意はございませぬ。」

さすがに、無礼が過ぎましたでしょうか。

「…運じゃ。」

「運、とは?」

「子が産めるか産めぬかなど、運でしかない。
子が産めぬということは、運がなかっただけじゃ。」

運。

ただ、それだけ。

仏の思し召し、でしかない。

「そして、その運はまだ私にも巡ってきておらぬ。
巡ってきたのは、かのおなごよ…。」