紅芳記


いろいろ考えるうちに顔が強張り、長い沈黙となってしまいました。

「…たしかに、身分としてはお稲は低い。」

父上だって、わかっているんじゃない。

「故に…。
お稲、そなたはお屋形様の養女となるのじゃ。」

「え!?」

お屋形様の養女?

「そうでもしなければ、真田は話を聞いてくれぬ。」

「し、しかし!」

「なんじゃ。
いかがした。」

「お屋形様は私を養女とすること、認めておられるのですか?」

「もちろん。
いやむしろ、お屋形様がお稲を養女にしてくださるとおっしゃられたのだ。」