翌々日、殿の久しぶりのお渡りがありました。
ここ二年ほど、御寵愛は夢の御方様一辺倒で私は正室という身分をゆらがせないほどの、必要最低限のお渡りしかありませんでした。
「十日後に、肥前国名護屋に向かうことと相成った。」
開口一番にそう告げられました。
私はその途端、頭が真っ白になってしまいました。
「左様に、ございますか。」
拳を強く握り、殿を真っすぐ見て声を揺らさないように答えました。
殿は、こういう大事なことだけは一番に私にお教え下さる。
「御武運、お祈り申し上げます。」
「小松…」
「…はい。」
「…すまぬ。」
そうとだけ言い、私を強く抱き寄せられます。


