紅芳記


足音が聞こえたので頭を下げました。

殿が上座に御座りになってから頭を上げます。

「遅くなってしまい、申し訳ござらん。
面を上げられよ。」

と仰せられました。

佐熊殿は頭を上げ、

「某は佐和山城主石田三成が家臣、佐熊伝右衛門にございます。
本日は関白殿下よりの言伝を預かり、罷り越しました次第。」

佐熊殿は先程と同じようなことを申されました。

「関白様の言伝とな?」

「は。
小田原攻めの功として沼田領を真田領にし、真田信之様を沼田城主とする。
とのことにございます。」

佐熊殿はそう申されると懐から書簡と思われるものを取り出し、殿に手渡しました。

「承知つかまつった。」

殿が読み終えたのを確認した後、佐熊殿は

「言伝はもうひとつございます。」

と言いました。