紅芳記


私は御使者のいる部屋に入りました。

上座の右側少し下に腰を下ろします。

御使者は私が座るのを確認し、

「某は佐和山城主石田三成が家臣、佐熊伝右衛門と申す者。
本日は関白殿下より言伝を預かって参りました。」

と口上を言ったあと面を上げました。

佐熊殿が少し顔をしかめられましたので

「申し訳ございません、殿は只今留守にしておりまして。
私は真田信之が妻、小松にございます。」

「これはこれは、奥方様でいらっしゃいましたか。
真田様はどちらに?」

「殿は城下にお出かけになられました。
じきに戻ります故、今しばらくお待ち下さりませ。」

「ははぁ…。」