紅芳記


私の予想は当たっていたのでしょうか、殿が城にお戻りになったのは夜が明ける少し前でした。

きっと夜は夢の御方様と睦まじく…。

はしたないなどと考える余裕もなく、私の頭はあれこれと想像してしまいます。

私を力強く抱きしめて下さったその腕で、夢の御方様を抱いたの…?

無論、それは殿のお勤めでもあり大名は側室を何人も持つのが当たり前なのです。

すべては世継ぎのため、家のため。

それでも私の心は握り潰されたようにズキズキとし、もやもやと曇っています。

本当は、私だけを見てほしい。

夢の御方様のところにも、右京殿のところにも、行ってほしくなんてない。

正室はこの私。

私こそが、殿の妻なのに。

いいえ、殿の妻は夢の御方様なのではないの?

御仲睦まじいお二人の間に割って入っておいて何と贅沢な。

されど…。

何度も自問自答をしているうちに、一日が終わっていってしまいました。