「父上、母上。 それに兄上に義姉上も。 もっと自重してくださいよ。」 横から声がするので、顔を向けると、信繁殿がしかめっつらで言っています。 「源次郎にはわからぬわ。 そなたはまだ妻帯しておらぬからの。 あぁ、そうじゃ。 源次郎に早く嫁を娶らせねば。」 源次郎とは、信繁殿のことです。 「父上! 俺はそういうことを言いたいんじゃない! 早く城の中に入って下さい! 家臣が困ってます!」 家臣達を見ると、皆苦笑いです。 「あぁ、すまぬ。」 殿は何食わぬ顔で城に入りました。