紅芳記


日が昇り、朝の支度も終わると、夢姫様にいらして頂く部屋を急いで整えました。

私付きの侍女たちがほぼ総動員となる大騒ぎとなってしまいました。

私は侍女たちが部屋を整えてくれたため夢姫様がいらっしゃるまで別の部屋で待ちました。

心の内は穏やかならぬものがありますが、侍女たちのいらぬ争いやいがみ合いを避けるべく平静を装います。

私がどっしりと構えていないと最悪、奥を二分するほどの女の争いが起こってしまいます。

そうなれば、侍女たちが安心して仕えることが出来ないだけでなく、もう一人の側室である右近殿にも肩身の狭い思いをさせかねません。

人の上に立つ者とは、そういうものなのです。

決して軽々しく言葉を発してはならず、その言葉を簡単に覆すことなど、許されません。

物事を深く深く考え、そして揺らがない強さがなくてはならないくらいのです。