紅芳記


世都は、音もなく部屋から出て行きました。

私は持仏に殿のご無事を祈り、手を合わせました。

ただ、ご無事で。

信幸様…。

戦など、早く終わってしまえばいい。

殿…。

まだ、出立から数刻なのにこれほどまでに寂しくなるなんて。

早く終わって。

戦なんて。

一日でも早く、ご無事で帰って来て下さいませ。