紅芳記


「奥方様。」

「来たようじゃの。」

殿が出立してから数刻、私に本多の頃に仕えていた侍女が来ました。

彼女の名は世都(セト)。

その正体は忍で、私が戦の動向を知るために呼んだのです。

「…姫、いえ、奥方様。お久しぶりにございます。」

「ええ。
息災で何より。
……お世都。
早速じゃが。」

「はい。
承知しております。」

「くれぐれも、無理はしないように。
そなたの身を優先してもらいたい。
ただ、戦の様子を随一、私に伝えてくれるだけでよい。」

「御意。」

殿がご無事でいるのかどうか、知りたいだけ。

「そなたの存在は一応、私をはじめとする奥のものしか知らぬことになっておる。
よしなに頼む。」

「は。」