紅芳記


「殿。」

出立の直前に殿に話し掛けることがかないました。

家臣の数人が私たちの方を見ています。

私は気になりながらも殿に歩みより、紅い布と結紐で作ったお守りを取り出しました。

「これを。
御武運、お祈りしております。」

殿に、しっかりとお渡し致しました。

「…これは、そなたの………。」

結紐で留めてあるので、一目でわかるほど頭でっかちです。

殿もすぐに気づかれました。

「はい。
私はいつも殿のお傍に。」

また、顔が真っ赤になっていることでしょう。

家臣たちの前で、なんとも恥ずかしい。

「…かたじけない。」

殿は私を真っすぐ見つめ、私も殿から視線をそらさず。

しばらくの沈黙。

ただただ、見つめるだけ。

「行って参る。」

「はい。」

殿は紅いそれを懐に仕舞い、視線を私から家臣に向けておっしゃられました。

「出陣じゃ!」

「おぉーっ!」

真田軍が、武蔵国に向け出陣致しました。