紅芳記


そして、いよいよ出立の刻限。

殿は皆を集め、はっきりとよく通るお声で

「皆、よいか。
これが最後の大戦となろう。
この戦の先に、泰平の世がまっておるはず。
ぬかるでないぞ。
必ずや、皆で帰るのじゃ!」

と、仰せられました。

「はっ!」

家臣たちも、強い眼差しで殿を見、短く返事をします。

「これより我等は上田をたち、越後の上杉、加賀の前田と共にまずは上野の松井田城に向かう。
よいな。」

大殿がそう仰せになりますと

「承知つかまつりましてございます。」

家老のひとりが代表して答えました。