紅芳記


「まったく。
姉上は…。
どうしようもないじゃじゃ馬…………っうわ!」

私は平八郎の目の前に薙刀を振り下ろしました。

「なにかおっしゃいました?」

「い、いえ!」

平八郎は笑顔を取り繕いつつも額には汗を浮かべておりました。

この様子を、遠くから父上と母上はご覧になっていたようで、その日の夕食にて「稲姫が男であったら…。」と、ため息をついておりました。