「何か、あったのか。」
「い、いえ。」
そう言うふじの目はやはり泳いでいます。
「右京殿に私のことを何か言われたのか?」
そう問うと、ふじの目は一層泳ぎました。
「そうなのじゃな。
何と言われたのか申してみよ。」
「………右京殿は、いえ、右京殿のところの侍女は、恐れ多くも殿の御寵愛は必ずや右京殿のものとなると、そう申されました。
そのようなことは決してないと言い返しましたが、このままではいずれ奥方さまの良くない根も葉も無いような噂でもしてきそうで…。
しかし、殿が奥方さまをお訪ね下さった時、そのようなことはないと私、確信致しました所存にございます。」
「そうか。
そういえば右京殿とは一体どのような女子なのじゃろうの。
侍女にそうまで言わせるなればかなりの器量なのであろ。」


