紅芳記


すると、殿は見たこともない寂しい眼をされました。

「小松…。」

そのまま、抱きしめられ耳元で

「すまぬ。」

と、一言申されますと熱い口づけをして下さいました。

あぁ、抱きしめられていて良かった。

そうでなければ…。

「わしは、小松の子を世継ぎにと思う…。
たとえ側室に子が生まれようとも。」

「それは…、なりませぬ。
年長者が家督を継ぐのは当然にございます。
正室の子でも側室の子でも、変わりませぬ。」

「…。
そなたは、強いの。」

「武家の者が強くなくてどうされます。
男でも女子でも武家の者であれば強くあらねばなりませぬでしょう?」