彼女がしたように、僕には今、守るべき、覚醒させるべき小さな人がいる。

それを殺戮の決め手として、クイーンの座につかせることが、今の僕の、目的だ。

なのに――

彼女は、残酷な手を打ってきた。

d4ナイトを、f5へ動かしてくる。

それは、キングへのチェックであり同時に、キングが逃げた時には、h4ポーンを斬り殺そうとしていた。

頭の中が、真っ白になる。

彼女は、僕がそのポーンをクイーンへ押し上げようと、知っているのか?

知っているはずがない……。

英雄の死を踏み越えて迎えようと言う女王を、こんなところで死なせてなるものか!

僕の、未来の女王を……守るんだ。

チェスは、触れた駒を必ず動かさなくてはならない。

僕はポーンに手をつけた。

キングがチェックを受けているのに。

h4ポーンをh5へ逃がすことを優先して。

冷静になって気付いた時には――

僕のキングはf5から跳躍してきた馬上からの攻撃に、さらされていた。

キングが、討ち取られる。





僕は、負けたのだ。

未来の女王を、守って。