キングを、逃がすしかない。


いや。ここはむしろ攻めるべきか……?

っ、っ、所詮、僕は素人だ……

読めても数手先程度……

ええい、ままよ……!

キングをd1からe2へ。

邪魔くさいc2の黒騎士に、プレッシャーをかける。

だれに剣を向けているんだ!

彼女はナイトを逃がすしかない。

c2からd4へ、馬が跳躍していった。

ならば、今が進攻再開の時!

キング自ら戦場を作るあげようじゃないか!

キングをさらに進出させ、c3へ。

今この瞬間、気分は全軍進撃命令を下したようなものだった。

彼女が、苦笑した。

守りが多かった僕が、まさかキングで攻めてくるとは思ってなかったのだろう。

その細い指がつまんだのは、小さな、ポーン。

f4にあったやつ。

それが、f3へ。

瞬間、戦慄した。

あと一歩で、ポーンが成る。

ビショップを出撃させるためにポーンを動かしていたと思っていたが――

なんてことはない、そのポーンはちゃんと、覚醒するだけの運を得ていたのだ!