歯噛みした。

彼女がさっき地道にポーンを動かしていたのは、進軍ではなく、ビショップが一気に飛び込んでくるための準備だったのだ。

キングをe2からe1へ、一歩後退させる。

そこは黒マスの上だし、c5ビショップなら再びチェックをかけてこられる。

が、チェックをかけたとしてもそこはキングの攻撃圏内。

補佐はいないのだから、そんな無理な手は打たないだろう。

そう、彼女はきっともっと狡猾な――

にゅっと、盤上を過り、彼女の手が僕のほうへ伸びる。

摘まんだのは――ずっと伏せてあった、a1のナイト!

それがc2へ駆け出し、さらにチェックをかけてくる!

っ、攻撃の手が、緩まない。

ばかりか、彼女のナイトと、二体のビショップが、いつのまにか主戦場に揃いつつある。

一時後退の隙を、まさかこれほど的確に突かれるなんて……