とにかく、ナイトを移動させなければ。

敵キングを早急に討てるよう、あまり後退はさせたくない。

動けるのはa8とc8。

c8にはビショップがいるから倒せるが――そこはキングの守備範囲だ。返り討ちに遇ってしまう。a8も同様――いや、わざわざ斬られに行くようなものだから、論外だ。

d7には、彼女のビショップが法術を利かせている。動けない。

戦場の変化に遅れないよう、a4やc4まで下がらせたくない。

なら――

d5しかない。

おもしろい光景だ。

移動させたナイトは、両隣をc5ビショップとe5ポーンに挟まれている。

僕も手が出せない。同時に、彼女も手が出せない。

実際の戦場なら、目の前の敵は倒せるのに。

チェスのもどかしさというわけだ。

もっともそれは僕も同じだが。

彼女が、すぐさま手を打つ。

f5ポーンを、f4へ。

彼女はまさか、あくままでもポーンをクイーンへ成らせるつもりか……?

キングは安全だ、動かさないでおく。

それより、b2のポーンに手をつけた。