e4ポーンでf5ポーンを倒す。

e6にはポーンがいるから、すぐさま返り討ちだろうが――

今さらこの戦況、ポーンくらいはくれてやる。

彼女はやはり、いま僕が動かしたポーンを取りに来た。

e6ポーンで、f5を。

さて、再び戦場は静かになった。

ここは、揺さぶりをかけておこうか。

彼女の黒魔術師のプレッシャーが、邪魔なのだ。

a2ポーンを、a3へ。

これで、b4ビショップは逃げるか、僕のそれを葬るかしかなくなった。

もっとも、a3ポーンの陰にはb2ポーンがいる。

a3へ攻め入ったら、その着地の直後に兵の槍に突かれる。

だから彼女は逃げるしかない。

そう――ビショップを――c5へ。

……c5?

しまった……彼女は逃げると同時に、僕のナイトに手をかけてきた。

いや、ナイトもビショップも、だいぶ動きに制限のある駒だ。

攻撃圏内から逃れるのは難題じゃない。

恐ろしいのはなにより、僕がこの一手を逃げに使うことで、彼女になにかを準備させてしまうかもしれないという――予感。