――……いや。

待て。

ここは、攻め時じゃないか。

そうだ。道は見えている!

かなり乱暴な手だが、もとより僕の国は傾きかけているんだ。

今さら――蛮勇のひとつやふたつ。

e3クイーンを、g5へ。

これで、h6クイーンと鼻先を付き合わせることになる。

そしてキングの護衛もわずかに薄くなる。

が、同時に僕は今、斜め左にいるe7キングへ、チェックをかけていた!

彼女が僕のクイーンを、クイーンで取っても構わない。

ただ、そのすぐ斜め後ろ、h4に偶然置き去りにされていた僕のポーンが、クイーンの仇を討つ。

クイーンを相殺させるか、キングを逃がすか。

彼女の取るべき道は二つに一つだ!

そして、どちらであっても僕にわずかな光明を見せてくれる――そう信じている。

彼女は、キングに手をつけた。

どの駒よりも大きく太いそれが、一マス、左へ。

d7へ動く。

守りを取ったか。

ならここで、女王戦争は終結させてもらう。

さようなら、僕のクイーン。

g5からh6へ動き、クイーンを舞台から弾き出した僕の女神は――

次の瞬間、なんてことはないg7ポーンに、突き刺された。

双方、戦場の百合が、散ったのだ。