クイーンは右から攻めている。

なら左から、ナイトを行かせよう。

c3で動く機会を逸していたナイトを、b5へ。

このあとは、さらにナイトをc7へ進撃させ、e8にあぐらを掻いているキングへチェックを……

――!

しまった!

見逃していた!!

気付いた時には遅く、彼女の手が打たれていた。

さっきd4へ動いたナイトが、c2へ切り込んでくる。

その光景に僕が目を見開き、後悔するのを待ってから、彼女の唇が言う。

「チェック」

つまり、王手だと。

まだ、まだチェック・メイトじゃない。いくらでも逃げられる……!

ここでナイトを返り討ちにしてやればいいのだ!

ナイトは、ひとつ隣のマスにある駒は取れない。

不規則さゆえの強味もあれば、弱味もある!

キングをe1からd2へ。

ナイトのすぐ真横へつける。

たとえこのナイトを取るのにもう一手かかろうともいい。

彼女がここでナイトを逃がすと踏んだのだ。

その間に、僕の攻勢を持ち直せばいい!

そのはずが――